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2017年5月13日土曜日

『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』広尾晃 (著) イースト・プレス

『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』

┃このままでは野球はマイナースポーツに転落してしまう
プロ野球は空前の観客動員に沸いているが、次世代を担う子どもたちがまったく興味を示していない。しかし、マスメディアは「野球の危機」を取り上げることもない。
“このまま手をこまねいていては”、野球はマイナースポーツに転落してしまう”
そういう危機感が著者にこの本を書かせたらしい。
清原和博の覚せい剤使用、読売巨人軍選手の賭博問題にみられる「モラルの崩壊」も若年世代の“野球離れ”を加速させるのではないかと著者は危惧する。

┃「野球離れ」の要因
“野球離れ”が少子化だけの問題ではないと考える著者はそれ以外の要因として6つのものをあげている。
【要因① 親の負担】
・用具の数が多く費用がかかる 公立で年額71万円 私立で年額131万円~雑誌『野球太郎(育児)』
・「お茶当番」などの負担
【要因② 暴力、パワハラ】
・アメリカのコーチから「日本ではマフィアが野球を教えているんだろ」と言われる「罵声と暴力」がつきものの指導
【要因③ 勝利至上主義】
・勝つためにはサイン盗みなど汚い手段も辞さない
・一人の投手の酷使
【要因④ エリート主義】
・特待生の学費免除などの特別扱いの反面、高校の3年間試合に出られない選手もたくさんいる
【要因⑤ 24時間、365日野球漬け】
・指導者に絶対服従で「自分で考える力」が身につかない。
・野球で結果を出せば、後は何も考えなくてもいいという「野球バカ」のイメージは母親たちに忌避される
【要因⑥ 団結しない野球界】
・プロ、アマ、学生、社会人など、主催団体が細かく分かれ、それぞれに「権威」「お山の大将」がいて団結しない
・プロ、アマ対立の歴史
・日本の野球界には「プロ野球」と「甲子園」というふたつの頂点がある
・野球界全体の「ガバナンス」「マネジメント」が存在しない。

この中には私自身とあたりまえのことと思っていた(いる)こともあって、いささか耳が痛い。

┃野球再建への10の提言
最後に著者は野球界再建のための提言をして締めくくる。
【提言① 野球界を統括する組織の創設】
【提言② 本当に組織を統括することができる経営者の擁立】
【提言③ 野球組織からのメディアの排除】
【提言④ 「甲子園」の解体と再生】
【提言⑤ 指導者のライセンス制の導入】
【提言⑥ プロ野球と社会人野球、独立リーグの一体化、組織化】
【提言⑦ 女子野球の振興】
【提言⑧ 高校野球を含む「部活」の改革】
【提言⑨ 野球ビジネスの一体化】
【提言⑩ 「百年構想」への参加】

川淵三郎さんがインタビューで、「百年構想」などのことに触れ、「サッカーのためではなく、スポーツ全体、そして子どものことを考えて言い続けてきた」というのを読んで、野球界のことだけを心配していた自分が恥ずかしくなった。日本のスポーツ全体を活性化するための野球再建でなければならないよなあ。

以下 インタビューの中で印象に残った言葉を抜粋。

“もともと野球は日本人に向いていると思うのです。相撲もそうですが、考える間があって、リセットができる。また一発逆転のギャンブル性、サスペンスがあります。「観るスポーツ」としてこんなに面白いスポーツはないでしょう。”(小林至氏 江戸川大学教授/元プロ野球選手)
“アメリカ人は「アメリカではプレイ・ベースボールだが、日本はワーク・ベースボールじゃないか」と言います”(池井優氏 慶應義塾大学名誉教授)