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2018年5月9日水曜日

広岡イズム - “名将"の考え方、育て方、生き方に学ぶ - (ワニブックスPLUS新書)

  これまでの著書のエッセンスを集約した一冊。野球の指導者論、組織論、健康法から日本人かくあるべしの理想論にまで及ぶ。
 広岡イズムとは、「正しいことを信念を持ってやること」だ。
 野球の指導において重視しているのが基本。代表的なものがコロコロとボールを転がし素手でとらせるというやり方。子供だましのようで反発をされることもあったが、辛抱強く繰り返し、多くの名手を育てた。「基本を意識に染み込ませることは、今日勝つ能力と将来勝ち続ける能力の両方を育てること」
 楽しむことだって正しく行わなければならない。正しい楽しみ方とは、相手を喜ばせること、だと説く。だから、オリンピック選手の、独りよがりの楽しかったの言葉には苦言を呈す。「遠足に出かける子どもでもあるまいし、何を一人で楽しんでいるんだ」。家族を喜ばせるためと洗濯や掃除などの家事も楽しんで行う。
 太ることは自分を律することが出来ない証。朝はコーンフレーク、豆乳、果物、昼はほとんど食べず、夜は自分で調理した純和風の56品の一日二食。いつまでもスリムな体型が保てるわけだ。
 指導をうけたある選手が「酒を飲むな。肉を食べるな」と広岡さんに言われたと聞いたことがある。ところが実際は80代で小脳出血で倒れるまでは17勺の熱燗の晩酌を楽しまれていたらしい。肉についても全体の2割程度なら食べてもよいと。修行僧やヨガの行者でないのだ。俗っぽい一面に少しほっとさせられる。ところでビールのCMに出ているICHIROは、酒は飲むのだろうか?
 一家の長たる父親が夕飯時に人生の真理を語って聞かせることが真の教育。読んでいると次第に広岡さんの前に端坐して説教されているような気分になる。
良薬は口に苦し、良い言葉は耳に痛し。