進学校というのも野球本の一つのジャンルとしてすっかり確立された感がある。
この本でも市立金沢高校、県立松山東高校、県立仙台第二高校、県立膳所高校、県立東筑高校、県立掛川西高校の6校がご丁寧に偏差値つきで紹介されている。2017年から2018年のチームにスポットをあてその学校の「いま」を中心にしたレポート。
市立金沢高校は石川県でなく、神奈川県横浜市の学校。名門・横浜高校のキャプテンとして荒波(元DeNA)、成瀬(オリックス)らとともに2003年センバツ準優勝した吉田斉が部長をつとめる。「『成功ありき』で考えているんです。ひとつでも失敗すると、そこから崩れていってしまう。」。失敗することになれていない、失敗してはいけないという優等生気質をずばり指摘している。
進学校の宿命、練習時間の短さ。県立松山東高校も7限のときは1時間40分しか練習時間がとれない。そういう中で監督の目ではなく、やらないとすぐ終わってしまうという集中力、自立心が養われる。
東北地方最高の偏差値71を誇る県立仙台第二高校は「文武一道」が校訓の伝統校。仙台一との定期戦は杜の都の早慶戦と言われる学校上げての一大イベント。負けてしまうと応援部が丸刈りなるという熱のいれよう。
優秀な頭脳を駆使してデータ分析に強みを持つ進学校県多い。県立膳所高校は一味違う。普段は書道部などを兼部する野球未経験者が「データ班」としてチームを支える。野球の専門用語を理解することから始め、偵察で丸一日1日3試合球場にいて野球にどっぷりつかることに慣れるのに時間を要するという。
春3回、夏6回の甲子園 過去30年の福岡公立高校で夏の甲子園に出場した唯一の高校、県立東筑高校。「石田伝説」の石田旭昇(法政大)で2017年夏、2018年春と二季連続の甲子園出場を果たしたチームを取り上げている。「2年半を野球だけに没頭させるなんてもったいない」という青野浩彦監督は「日本一短い練習で、日本一強いチームを作ること」。
「うち進学校なんですか?」。県立掛川西高校は「野球が強いから掛西に入るために勉強した」という部員も多い。静岡高校の部長、副部長として4年で5度の甲子園に出場した大石卓哉監督。「投手が投げてから捕手が返球する二塁到達2秒以内 守備からベンチに戻るのは10秒以内 ベンチから守備につくのは35秒以内(投手、捕手が攻撃に絡んだ場合は45秒以内)」といった甲子園タイムを意識して練習する。
もうすぐ地方大会は真っ盛り。進学校の部員たちには2割増しくらいでエールを送りたくなる。
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