この時代の野球史に残る大きなトピックが明治44年の「野球害毒論」。アンチ野球の朝日新聞と野球を愛するものたちが論戦を繰り広げた。その急先鋒が、当時冒険小説家としても人気だった押川春浪と「天狗倶楽部」。その春浪のプレーぶりを見たいという動機から「天狗倶楽部」に所属することになった銀平もこの戦いに巻き込まれることに。銀平とその家族など一部を除いて登場人物は押川春浪はもちろんほぼ実在の人物だ。大隈重信、安部磯雄、飛田忠順、春浪の弟、清など早稲田の歴史に残る人たちも登場する。もちろん野球を擁護する側だ。
物語のクライマックスは銀平が讀賣新聞主催の「野球問題演説会」でのスピーチするシーン(大隈候が急用で欠席したので代理というのがひっかかる)。一高野球部で補欠としてプレーすることのかなわなかった銀平が語る野球への熱い思いとは──。
作者の木内昇が「のぼる」ではなく「のぼり」で女性だったことに少しびっくり。高校、大学でソフトボールに打ち込んだ彼女は、試合シーンを細かく描きたい欲求を抑えるのに苦労したという。
0 件のコメント:
コメントを投稿