若年層の競技人口の減少で野球の未来が心配されるなか、野球で人生を切り拓きたいと夢見る少年、そうなって欲しいと願う親はいぜん多い。野球が準国技化しているこの国では、優れた野球選手を見つけ出し、育むシステムが成熟している。才能のあるものの多くはそのレールに乗って野球人生を歩んでいく。
大阪桐蔭の“二刀流”根尾昴。雪深い飛騨に生まれた天才は、小学校2年で兄をおって野球を始め、もうその2年後には近隣のリトルリーグやボーイズリーグの関係者から注目される存在になる。12歳で128キロのストレートを投げる少年を巡って激しい争奪戦。グランドへの送迎を条件に口説いたチームもあったほどだ。KEIOブランドで中学の有望選手の持つ慶應義塾高校の関係者が根尾の元を訪れたのは中学2年の春。全国大会で146キロというプロ顔負けのストレートを投げるとスカウト合戦はさらにヒートアップ。最後は根尾自身の希望で大阪桐蔭に進路を決める。
息子を野球エリートにするために親が熱心なケースも珍しくない。「大学でも二刀流」の鈴木駿輔は、芸能プロダクション社長の父のマネジメントで最高の教育を施された。中学で指導を受けた所属チーム以外の関係者は、元プロ8人、元社会人1人、格闘家1人。野球教育に月に15万円払うこともあった。
順風満帆であるはずの野球エリートにもプロの壁は立ちはだかる。楽天のオコエ 瑠偉は、上半身と下半身がバラバラで左の脇が空くスイング軌道が安定しないフォームのためにプロの投手のボールに出来ていない。傑出した才能ゆえにこれまでの野球人生と修正されてこなかたツケを支払わされているのだ。
今後はますます持つもの、持たざるものの2極化が進んでいく中、野球エリートはどのような存在になっていくのだろうか。
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