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2018年4月18日水曜日

イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち 澤宮 優 (著)

 野球の試合はおろかキャッチボールすらやらなくなって10数年経つ。寂しさはあるし、野球やりたいと衝動にかられることもある。その気持ちに揺さぶりをかけてくるのがイップスだ。
 岩本勉は自分がイップスであることを公言することで克服したという。岩本のような明るいキャラだからこそのなせる業。そういう開き直りが出来ればイップスなんかにならないよな。
 イップスになりやすい性格、イップス気質とういうものはあると思う。土橋勝征は話すのが苦手なのでヒーローインタビューを拒否したという。さもありなん。土橋は自分が苦しんだ経験から、他の選手のどんな送球も絶対捕ってやる、という気持ちでプレーしたという。イップスは人を優しくもするのだ。
 白井一幸は、精神的なことに原因を求めがちだが、技術的な問題もあるという。白井が指導した森本 稀哲の場合は、「肘より高い位置にボールがある時間が長いことで考える時間が長くなり、リズムも悪くなっていた」、と指摘する。動きやリズム、上半身、下半身の連動などの問題を改善すれば治せると断言する。白井のような鋭い観察眼、的確な言葉でアドバイスできる指導者がそうそういるわけではない。
 「大脳基底核に障害が起こり、筋肉に意志を伝える中枢神経機能の抑制系が低下して異常」。医学的にはジストニアという障害である可能性が高いそうだ。ちょうどデータを詰め込み過ぎたコンピュータがオーバーフローを起こしたような状態。筋肉の問題ではなく、脳の問題だと言うのだ。どおりで投げれば投げるほどひどくなるはずだ。
 技術的な問題、脳の問題と原因らしきものがわかったしてもイップスは必ずしも治るものではない。そもそも治すものではなく、うまく付き合っていくものなのだろう。