チームのレベルを知るノックでは中継プレーを重視する。外野手の右投げ、左投げによってカットマンはターンの方向を変え、位置を1mでずらすように教え込む。ボール回しの中ではファンブルした打球の処理を盛り込む。一年に1回あるかないかのプレーにも時間を割く。試合で選手たちが「こんなときにどうするか教わってない」という状況をダメだと思うからだ。
「打球の基本はフライ。ゴロは打ってはいけない」には“打撃の神様”のダウンスイングを理想と仰いだ僕たち世代には意外な考え方だ。「フライを大きな打てないと大きな当たりが生まれないから」。低い当たりで打ってつないで点をとるという発想で試合しているんだから野球強豪校に勝てないはずだ。
小倉さんと言えば小倉メモ。ネット裏で何回か拝ませてもらったことがあるが、巨体にミスマッチな細かい文字を高速でノートに綴る。横浜高校に在籍した23年で600校以上の膨大なデータを作った。打者については、打球コース、打てるコース打てないコース。投手については、持ち球、各球種の球威精度、配球を書いていく。この職人技とも言える作業を部員が自分の目で行うのが理想だと小倉さんは言う。。グランドでは戦力になることが難しい部員にこのような活躍の場を与えるのはチームのためにも本人の成長のためにも有意義。どこかの連盟はこの“行い”を固く禁じているがいかがなものか。
偵察って言い方がネガティブでよろしくない。分析とか研究という言い方を浸透させて堂々とやればいい。ただ見ているだけ、ビデオを撮っているだけでは生きたデータは作れないんだから。そこに知恵や工夫が生まれる。
『野球 試合で勝てるチームの作り方 』小倉 清一郎 (著) 池田書店 |