内容(「BOOK」データベースより)
球界一の頭脳派・古田敦也が、自身の経験を元に、野球観戦のレベルが格段に上がる「コツ」を、松井秀喜、イチロー、ダルビッシュ有、田中将大ら一流選手のプレーを例に挙げつつ伝授する。これを読めば、試合を見る「目」が、確実に変わる!
はじめにのところで古田氏は、2回変化球を空振りしたバッターが次のストレートを見逃して三振に倒れた場合を例にして、「多くのファンの皆さんは、このバッターを変化球もストレートも打てないただ駄目なバッターだと嘆かれると思います」として、そこにある深い心理戦が分かるようになるコツを伝授したいとこの本を初めている。
「なんでバットを振らないんだ」。これは、「バントくらい出来ないのか」と並んで「野球観戦あるある」的にネット裏でつぶやかれるフレーズ。そういう人に限って野球通を気取っているからたちが悪い。、「野球観戦」の経験値は高くても「野球」そのものの経験値は低いから仕方ないことだが、「もっと野球を深く観た方が楽しいのになあ」と常々思っている。
こういう本を読んで勉強して欲しいが、まあそういう方に限って謙虚さがないからなあ(笑)。俺は古田より野球を知っている、と言いかねない。
「ピッチャーの観方」「バッターの観方」「守備の観方」「監督の戦術」という章立てでプロ野球の選手を例に出しながら、ポイントを解説している。
「ピッチャーの観方」の章では、良いピッチャーの条件として①球速②変化球の種類③変化球の質④コントロールに加えて、クイックモーション、牽制球、バント処理(三種の神器)の大切さをと説く。こういう総合力の高いピッチャーとしてヤンキースの田中将大を挙げている。
上原浩司のフォークを使ったカウント稼ぎや三浦大輔のカットボールの有効な使い方、カーブを投げる難しさ、杉内俊哉のフォームの打ちにくさなども解説してある。
個人的に面白いなあ思ったのは、かつてはマウンドが今より30センチ高かったという事実。「2階から落ちてくるカーブ」というのもまんざら大げさな話ではないのだ。
「バッターの観方」。もっとも良いバッターは「選球眼」の良いバッター。落合博満さんは審判との会話の中で「選球眼」の良さを印象づけていったらしい。
「守備の観方」。自身のポジションであったキャッチャーについて「観察力」の大切さを説いている。
新庄剛志はイメージとは裏腹にベンチの指示がなくてもポジションを変えられる「できる」外野手だったのだとか。
「監督の戦術」ではID野球を叩きこまれた野村克也監督とのエピソード。最初のミーティングで黒板に書かれた言葉は「耳順」。人はとかく目から入ってくる情報ばかりに頼りがちだが、耳から入ってくる情報にもっと気をつけなさい、大切なことを聞き逃すなということ。これだけ書いたミーティングの翌日からプロとして、人として、野球人として自覚を問うミーティングが続いたのだとか。
「なんでバットを振らないんだ」とか言う前に人の話をもっと聞いてはいかが。「耳順」ですぞ。