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2018年12月14日金曜日

強豪校の監督術 高校野球・名将の若者育成法 (講談社現代新書) 松井 浩 (著)

 
今年はパワハラという言葉でスポーツ指導者が注目された。他人に物を教えるということがそれだけセンシブルだということだ。監督の力が八割以上と言われる高校野球ももちろん例外ではない。
 カリスマ的存在になりつつある大阪桐蔭の西谷浩一は面談を交えた「徹底的個別指導」でエリートを育成する。さながら東大を目指すエリート予備校のようだ。
 強気な采配と裏腹にさまざまな理論に精通したプロフェッサーのような東海大相模の門馬敬治は部員の「気づき」を重視し、恩師原貢の監督の野球を伝承する。
 門馬が師弟愛なら原田英彦は母校愛だ。敗戦後、通路で野次るファンに「俺の方が(平安のことを)思ってんじゃ」とつかみかかる熱血漢。熱く、厳しく愛する平安の野球を叩き込み、部員をカッコいい男に成長させていくゴッドファザーだ。
 田所孝二は青年海外協力隊でグアテマラ、キューバの野球に触れ、日本野球の息苦しさに気づく。たどりついたのはミスを恐れずカバーする打って勝つ野球。「岐阜第一が一番楽しそうに練習している」と大学の監督に言わしめる。
 関西から有力選手を連れてくる、地元の部員にこだわる、県外者と地元の部員のベストミックスをはかる。賛否が問われてひさしい「野球留学」の問題を著者は青森県の監督たちを通して考える。
 最後は、かつての”野球王国”高知に飛び、野球人口の減少、子供たちの体力低下など決して明るいとは言えない野球の行く末を展望する。
 プロ野球選手の引退後に関するアンケートでやってみたい仕事として、高校野球の指導者は調査後初めて1位から転落し4位になったという。ただ野球の技術だけを教えるわけではない高校野球における人間教育の難しさを感じる選手が増えているのかもしれない。
 
 

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